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カテゴリ:Tax( 8 )

Tax Treaties

NY州の司法試験(NY Bar)が終わって半月以上が過ぎましたが、もはや勉強した内容の大半は忘れつつあります。NY Barのために勉強した内容は、そのほとんどは忘れてしまっても支障がないような内容ばかりなので(同じ分野の日本法すら仕事では使わないものも多い)、別に構わないのですが、その前にNYUで勉強した内容についても、やや記憶の彼方になりつつあるように感じます。こちらは忘れてしまってはもったいないので、気が向く科目だけですが、記憶の喚起も兼ねて、順に振り返っていってみたいと思います。まずは春学期の“Tax Treaties”から。

この科目は、毎年、各国からのvisiting professorが教えているのですが(ちなみに来年はNYUのInternational Tax Programの責任者のRosenbloom教授がご自身で担当されるようです。)、今年は偶然にも日本人で、東大の増井教授がご担当でした。

授業の内容はOECDモデル条約のコメンタリーを順に読んで、租税条約の基本的な構造を見ていくという内容でした。日本人の教授であったため、日本についての言及もあり、私にとってはそのような意味でも参考になりました。もっとも、教授は他国の法制についても通じており、租税条約にまつわる他国の判例や制度や文献についてもいろいろと言及して、他の学生たちも驚いていました。

興味深い内容はいろいろとあったのですが、授業も始まったばかりのころ、日本にも関連する点として触れられていた内容の1つに、租税条約と国内法の関係の話がありました。いわゆるプリザベーションの原則、すなわち、国内法上、納税者に有利な規定が租税条約の締結によって損なわれることがない、という話です。

大雑把な説明の内容としては、以下のとおりでした(←私の理解に誤りがあるかもしれず、以下の内容における誤りはすべて私の責任です、念のため。)。

まず、具体的な事例として、以下のような事例を念頭において、説明がなされました。

R国の会社A社が、S国の会社B社に対して、B社のP国にある工場で用いる特許権についてライセンスをしている。S国の国内法によれば、特許権等の使用料については、当該特許権等がS国において使用される場合にS国で30%の源泉徴収課税がなされる。一方、R国とS国の間の租税条約によれば、使用料は特許権等の支払者が居住者である国において10%の源泉徴収がなされる。

条約と国内法の関係としては、国によって、①条約が国内法よりも優先、ただし、条約は、そのままでは国内法的効力を持たず、国内法の規定に基づいて初めて条約が国内法的効力を有する、②条約と国内法が同等で、条約か国内法かにかかわらず後法優先(←アメリカはこれ。他国から批判多い)、③条約が国内法よりも優先し、国内法の規定を必要とせず、国内法的効力を有する、の3通りがあります。そのうち日本は③に該当すると考えられています。

条約に国内法的効力があるということとの関係で、プリザベーションの原則が問題になってきます。この点、日本国内では、(上記のような設例について)(i)国内法に定める以上の負担を課すような条約の規定については適用されないと解する見解と、(ii)条約が優先して適用されると解する見解があります。ただ、実際には、日本の税法上は、「租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」(以下、「実施特例法」)3条の2により、条約の定める限度税率が適用される旨が規定されているため、上記のいずれの立場に立ったとしても、上記の設例のような場合における結論は異ならないことになります。ただ、このような実施特例法の規定についても、プリザベーションの原則の見地からは制限的に解すべきとの見解もあるそうです。

講義でそのような話を聞いて、著者の1人の方から留学に出てくるときにいただいた左記の本(井上康一・仲谷栄一郎著『租税条約と国内税法の交錯』(商事法務))を見てみたところ、さらに詳細な説明がなされていました。この本によれば、プリザベーションの原則に対する考え方としては、以下の3通りの考え方があると説明されています。

(A)狭義説:プリザベーションの原則の適用があるのは、国内税法に定める非課税、免税、所得控除、税額控除等の「課税上の積極的な斟酌」に限られるという考え方

(B)広義説:プリザベーションの原則の適用があるのは、納税者にとって有利な国内税法条の規定であるという考え方

(C)選択説:プリザベーションの原則により、納税者は、自己に最も有利な形で、租税条約の適用の有無を選択できるという考え方

上記の本は、ざっくり言ってしまうと、(B)広義説は、条約/国内税法の適用が納税者にとって一概に有利とも不利ともいえない場合があり、そのような場合を想定すると妥当ではない、(C)選択説は、そのように選択を納税者にゆだねる明文の根拠はないのに、そのような選択が許されるかの根拠が不明であるとして、(A)狭義説を妥当としています。

ただ、国際的には、このようにプリザベーションの原則を狭く解するのは多数派とはいえないようです。少なくとも、アメリカのモデル租税条約のTechnical Explanationは、上記のうちの(C)選択説に基づいています。そのようなことを考えると、個人的には、プリザベーションの原則の趣旨である納税者有利の思想を貫徹すれば、(C)選択説が妥当なような気もします。

なお、プリザベーションの原則に関して選択説に立たない場合であっても、源泉徴収税の減免に関する「租税条約に関する届出書」等の提出の有無によって、事実上、租税条約の適用の有無を選択できる場合もあります(上記『租税条約と国内税法の交錯』73頁注2参照。)。

(おまけ)
増井教授の東大ロースクールでの講義に基づく本(共著)が出たみたいです。私も取り寄せて読んでみようかと思っています。
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by fbrat | 2008-08-18 16:10 | Tax

Netherlands Antilles

昨日(5月31日)、テレビでメッツ対ドジャースの試合をテレビ観戦してました。メッツの先発は、今週DLから復帰予定のペドロ・マルティネスのロースター入りにより、マイナー降格の危機に瀕しているペルフリー。7回まで2失点と好投も、打線がドジャース先発ビリングスリーの前に零封され、7回裏を終わって0-2。試験勉強中の気分転換のために見ているのに、これじゃ全く気分転換にならないじゃないかと思って、ここでTVを消したのですが、この後、ベルトランの同点2ランとタティスのタイムリーが飛び出して、メッツが3-2と逆転勝ちしたようです。私が見ていない方がいいんですかね…。ええ、試験勉強に集中します。

ところで、メッツは、もともとアルーやチャーチが欠場中のところへ、一昨日の試合でカスティーヨが左大腿部の痛みを訴えてスタメンから外れるなど、故障者だらけですが、ドジャースもファーカル、ガルシアパーラらがDL入り中と似たような状況。黒田と並んでドジャースのこのオフの補強の目玉の1つだったアンドリュー・ジョーンズもDL入りした挙句、先週、ひざの手術に踏み切ったようです。

このアンドリュー・ジョーンズ、10年連続でゴールデングラブ賞を受賞しているメジャー・リーグを代表する外野手の一人で、2005年に51本、2006年に41本の本塁打を放つなど、パワーにも定評があります。去年、私がNYに来て初めて観に行ったメッツの試合はブレーブス戦だったのですが、そのときはまだブレーブスの選手でした。見た目はずんぐりむっくりで、一見したところでは守備のうまい選手には全く見えないのですが。。。見た目といえば、アンドリュー・ジョーンズは両腕と首の後ろに刺青をしています(他の場所にもしているかもしれませんが、前にテレビで見ていて確認できたのはこの3箇所。)。片腕に蜘蛛、もう一方の腕に蜘蛛の巣というだけでも十分悪趣味なのに、首の後ろの刺青は、なんと、漢字で「牛」(!)と書いてあります。おそらくは英語でいうならばoxではなくbaffaloをイメージしているのではないかと思いますが、ずんぐりむっくりした人の首の後ろに「牛」と書いてあったら、日本ではイジメか何かだろうと思われそうです。

ところで、アンドリュー・ジョーンズの出身地はオランダ領アンティル諸島。他にオランダ領アンティル諸島出身の野球選手といえば、日本で有名(?)なところでは、ロッテ及びヤクルトで活躍したヘンスリー・ミューレンがいます(←現在はパイレーツの球団職員のようで、桑田関連のニュースの際に名前を見かけました。)。このオランダ領アンティル諸島は、野球に関心がない人の間では、むしろタックス・ヘイブンとして有名です。同じカリブ海にあるタックス・ヘイブンでも、日本では、おそらくケイマン諸島やバミューダや英領バージン諸島の方が有名なように思われますが、このオランダ領アンティル諸島がNYUのInternational Taxの授業の中で一度だけ大きくとりあげられたことがありました。それはどのような文脈でかといえば、アメリカにおける非居住者に対する利子の支払における源泉徴収に関しての話でした。

アメリカの歳入法典上は、非居住者に対して支払われる利子が、いわゆる“定期定額所得”(fixed or determinable annual or periodical gains, profits and income)に該当する場合には、30%の源泉徴収の対象になるのが原則です。しかしながら、このような源泉徴収を避けるために、かつては、アメリカの借主は、自ら社債を発行するのではなく、利子に対する源泉徴収を免除する租税条約上の優遇措置を利用して、そのような租税条約が適用になる国・地域に(その代表例として、米蘭租税条約の適用の対象となるオランダ領アンティル諸島が言及されていたのですが)、金融子会社を設立して、その金融子会社に社債を発行させ、アメリカの借主は当該金融子会社から借入れをするというスキームが利用されていました。「かつては」と書いたのは、現在では、一定の要件を満たした、いわゆる“ポートフォリオ利子”に該当する利子については、定期定額所得に適用される源泉徴収が免除されているため、このようなスキームを利用する必要性がなくなったためです。

この“ポートフォリオ利子”に対する源泉徴収の免除(Portfolio Interest Exemption、以下“PIE”)が、最近、日本との関係でクローズアップされたのが、米国発行体によるサムライ債への源泉徴収問題でした。PIEについては、同じ社債でも、記名式(registered form)か無記名式(bearer form)かによって、その満たすべき要件が異なります。この点、日本における社債の方式が、従来、bearer formとして認められていた現物債・登録債から、新たに振替債に移行するに際して、(振替債では、従来の現物債・登録債と異なり、社債権者に券面の発行請求権が認められないために)振替債の方式による社債はregistered formとして取り扱われるという話が出て、このままでは米国発行体によって日本で発行されるサムライ債がPIEの要件を満たせなくなり(←この従前から適用されていたbearer formの社債の利子がPIEに該当するための細かな要件を定めているのがTEFRA D(TEFRA = Tax Equity and Fiscal Responsibility Actの略)と呼ばれる規則1.163-5(c)(2)(i)(D))、その利子が米国における源泉徴収の対象となるということで、問題となりました。結局、bearer formであった既発債が振替債に移行した場合にはそのままbearer formとして扱われ、新たに発行される振替債についても、現物債への交換権付の振替債であればbearer formとして取り扱われることになったようです。

ちなみに、上記のアメリカにおけるPIEと同様の、日本法上の制度として、民間国外債の利子の源泉徴収免除の特例があります。
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by fbrat | 2008-06-01 21:59 | Tax

Source Rule & Hockey Players

NHLはいよいよ各カンファレンスのプレーオフ決勝が終了し、この土曜日からStanley Cup。イースタン・カンファレンスはピッツバーグ・ペンギンズ、ウェスタン・カンファレンスはデトロイト・レッドウィングスがそれぞれStanley Cupに駒を進めました。ちなみに、私が応援していたレンジャーズは、私の大学の期末試験期間中に、イースタン・カンファレンスのプレーオフ準決勝であえなくペンギンズに敗退してしまいました。

ところで、プロスポーツに関してよく問題になる法律は知財とか独禁法とかですが(会社法でも、昔、カブスがナイトゲーム用の照明設備を設置しなかったことについて、Business Judgment Ruleが適用された判例がありますが)、税法が問題になることはあまりありません。もちろん、スポーツ選手の脱税事件などはありますが、それはスポーツに関わる法律問題というより、そのスポーツ選手個人にまつわる問題です。そのため、アメリカで税法を学んでいても、スポーツの話が出てくることはほとんどなかったのですが、そんな中でアイスホッケーだけが例外でした。

アメリカでは、非居住者の事業所得については、アメリカに源泉がある、アメリカにおける営業または事業に実質的に関連する所得は、居住者の事業所得と同様に課税されます。役務に対する報酬については、役務の提供の場所が源泉地となるのですが、この点に関して、アイスホッケー選手に対する課税について、いくつかの判例やRevenue Ruling等が出されています。

なぜ、ホッケー選手について問題が生じるかといえば、アイスホッケーは、カナダで特に盛んなスポーツであるため、現在のチーム数でいえば、東西カンファレンス各15チームのうち各3チームずつがカナダを本拠地とするチームです。したがって、カナダで試合が行われることも頻繁にあり、アメリカから見て非居住者にあたるホッケー選手の課税について、役務の提供地がアメリカ及びカナダの両国にわたることになるため、報酬のうちのどの部分がアメリカに源泉があるといえるかが問題となるわけです。

この点について、Revenue Ruling 87-38は、ホッケー選手の報酬は、シーズン前のトレーニング・キャンプ、レギュラー・シーズン、プレーオフのすべてについて支払われているものであり、これらの全日数のうち、そのうちアメリカで行われた日数に相当する分を、アメリカ源泉の所得として課税するとしています。妥当なようにも思われますが、これはもともとホッケー選手の報酬はレギュラー・シーズンだけが対象であるとしていた過去のRevenue Rulingに対して、これを否定する判例が出たために、判例を受けてRevenue Rulingが修正されたようです。個人的には、プレーオフについて含まれるのは当然だと思いますが、シーズン前のキャンプについてはどうなのかなという気もします。

と書いてきて、当然、誰もが疑問に思いそうなことは、MLBにもトロント・ブルージェイズ、NBAでもトロント・ラプターズがあるので、同様の問題が生じるのではないかということです。この点について実務上どのようになっているかは私にも分からないのですが、同様に日数で比例配分する処理がなされているのでしょうか。
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by fbrat | 2008-05-21 18:02 | Tax

“D” Reorganizations その2

一方、日本の税制についてみてみると、D型組織再編に対応する類型の取引は、日本の税制における会社分割のうち“分割型分割”に相当し、日本における“分社型分割”はアメリカでは歳入法典351条の対象であることは上に書いたとおりですが、“分社型分割”も含めた日本の適格会社分割の要件は、以下のとおりです。

会社分割について適格が認められるための要件についても、合併や株式交換と同様、①100%グループ内の会社分割、②50%超100%未満のグループ内の会社分割、③共同事業を営むための会社分割があり、すべての適格会社分割に共通する要件として、

(Ⅰ)分割会社の株主に承継会社株式またはその親法人株式(100%グループ内の会社分割については100%親法人に限る。)のいずれか一方以外の資産が交付されないこと、および、

(Ⅱ)(分割型分割についてのみ)承継会社株式またはその親法人株式が、分割会社の株主の有する分割会社株式の数の割合に応じて交付されること

②と③に共通する要件として、

(Ⅲ)主要資産等引継要件(=会社分割により移転される事業(以下、「分割事業」)に係る主要な資産および負債が承継会社に移転していること)

(Ⅳ)従業者引継要件(=会社分割の直前に分割事業に従事している従業員のうち約80%に相当する者が、分割後の承継会社の業務に従事することが見込まれていること)、および、

(Ⅴ)事業継続要件(=分割事業が、会社分割後も承継会社において引き続き営まれることが見込まれていること)、

③のみの要件として、

(Ⅵ)事業関連性要件(=吸収分割の場合、分割事業と承継会社が分割前から営む事業のいずれか(以下、「分割承継事業」)が相互に関連するものであること、共同新設分割の場合、各分割会社の分割事業同士が相互に関連するものであること)、

(Ⅶ)規模要件(=吸収分割の場合、分割事業と分割承継事業の、共同新設分割の場合、各分割会社の分割事業同士の、売上金額、従業者数、資本金の額もしくはこれに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないこと) or 経営参画要件(=吸収分割の場合、分割会社の役員のいずれかおよび承継会社の特定役員のいずれかが、共同新設分割の場合、各分割会社の役員のいずれかが、承継会社の特定役員となることが見込まれていること)、および、

(Ⅷ)株式継続保有要件(=分割型分割の場合、分割会社の株主で会社分割により交付される承継会社(またはその親法人)株式を継続して保有することが見込まれる者が保有する分割会社株式の分割会社発行済株式に占める割合が80%以上であること(但し、この要件は分割会社の株主が50人未満の場合のみ)、分社型分割の場合、分割会社が会社分割により交付を受ける承継会社の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること)、

があります。

日本とアメリカの違いとしては、繰り返しになりますが、まず、日本における分社型分割がアメリカのD型組織再編には含まれておらず、設立等に関する歳入法典351条が適用になることが挙げられます。歳入法典351条において現物出資が非課税とされるためには出資後に出資者が会社を支配(歳入法典368条(c)、上記のとおり、発行済株式の議決権の80%以上、かつ、各無議決権株式の80%以上ずつを保有していることが必要。)していることが必要になります。したがって、例えば、吸収分割において、分割会社が、会社分割によって、従前、資本関係のない承継会社から、その発行済株式の50%にあたる株式の発行を受けるような場合には、日本において適格になるような場合であっても、アメリカでは適格にならないということになります。もちろん、逆に、アメリカでは非課税の現物出資に当たりうるような分社的分割が日本では非適格という場合もあります。

次に、アメリカの取得的D型組織再編に当たる取引としては、日本においても、上記のとおり、合併類似分割型分割と呼ばれる類型の取引が存在します。ただし、これは、適格組織再編についての類型ではなく、繰越欠損金の引継について認められている類型(これ以外の場合は、会社分割について繰越欠損金の引継は認められていない。)であって、適格組織再編となるためには、別途、上記の会社分割の税制適格要件を満たす必要があります(なお、合併類似分割型分割では、分割会社が分割直後に解散することが予定されているため、グループ関係が継続されることが必要なグループ内の会社分割の適格要件を満たすことはできません。したがって、共同事業を営むための会社分割の適格要件を満たすかどうかの問題となります。)。一方、アメリカにおいては、A型、C型、F型ならびに歳入法典354条(b)(1)(A)および(B)の要件を満たすD型およびG型(すなわち、D型については取得的D型組織再編)について、繰越欠損金の引継が認められています。ただ、アメリカの取得的D型組織再編の“substantially all”の要件は、C型以上にかなり緩やかに解されているようなので、資産および負債をすべて移転しなければならないとされている日本の合併類似分割型分割よりは、要件として緩やかといえるかもしれません(もっとも、アメリカにおける繰越欠損金の利用には、歳入法典382条に規定するownership changeがあった場合には同条に規定する利用制限がかかってくるので、合併類似の会社分割における繰越欠損金の引継について、一概にアメリカの方が緩やかとも言い切れないとは思います。)。

最後に、アメリカの分割的D型組織再編と日本の分割型分割の比較としては、例えばアメリカの(ⅱ)積極的事業活動の要件と日本の(Ⅴ)事業継続要件のように、関連性がありそうな要件も認められるものの、全体としてはかなり異なった要件の定め方になっているため、一概にどちらが厳しくてどちらが緩やかとは言えないように思われます。大きな点としては、日本では、spin-offを含む分割型の単独新設分割や非按分型の分割型分割が適格にならず、また、金銭等の交付は一切認められないという点で制限が厳しいこと、一方で、アメリカでは、(ⅴ)~(ⅶ)のような租税回避に対応するための要件が設けられていることなどが指摘できるかと思います(渡辺徹也『企業組織再編成と課税』参照。)。特に、アメリカでは、企業がその事業の一部をspin-offしてIPOを行うことがよくなされているという話を聞くと、日本でも、新事業の創出等の観点からも、少なくとも一定のspin-offについては非課税化されることが望ましいように思われます。
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by fbrat | 2008-04-30 17:12 | Tax

“D” Reorganizations その1

C型組織再編からまた時間が空いてしまいましたが、D型組織再編について。

D型組織再編は、ほぼ日本における会社分割のうちいわゆる“分割型分割”ないし“人的分割”(※注記参照)にあたるものです。日本における“分社型分割”ないし“物的分割”は、アメリカでは設立などに関する歳入法典351条により普通の設立などにおける現物出資と同様に扱われます(日本においては、現物出資については、適格組織再編の一類型として別に要件が規定されています。)。

D型組織再編を定義する歳入法典368条(a)(1)(D)は、D型組織再編を、

・会社の資産の全部または一部の、他の会社への移転であって、

・移転した者かその株主(あるいはその組み合わせ)が、移転の直後に資産の移転を受けた会社を支配しており、

・資産の移転を受けた会社の株式または有価証券が、計画に従い、歳入法典354条、355条または356条によって適格とされる取引によって分配されるもの

と定義しています(なお、上記の2つ目の要件の“支配”については、発行済株式の議決権の80%以上、かつ、各無議決権株式の80%以上ずつを保有していることが必要とされます(歳入法典368条(c))。)。

D型組織再編には、大きく分けて2つの類型があるのですが、これは、上記の3つ目の要件について、歳入法典354条(及び356条)に基づいて株式の分配がなされるものと、歳入法典355条(及び356条)に基づいて株式の分配がなされるものがあるためです(なお、354条、356条はこれまで見てきたA型、B型、C型などにも適用される規定です。)。したがって、D型組織再編は、これらの354条又は355条に規定される要件を満たす必要もあります(なお、356条は、非適格資産の分配についての規定なので、いずれの場合にも問題となりえます。)。このうち、354条の要件を満たす場合が取得的D型組織再編(acquisitive D reorganization)、355条の要件を満たす場合が分割的D型組織再編(divisive D reorganization)と呼ばれます。

前者の要件については、具体的には歳入法典354条(b)(1)(A)及び(B)がこれを定めているのですが、法人Aが、その実質的に全て(substantially all)の資産を法人Bに移転するとともに、法人Bの株式の50%超を取得し、その法人Bの株式を法人Aの株主に分配して、法人Aが清算されるというような場合に適格とされます。

日本の会社分割でいえば、分割型吸収分割において分割会社がその実質的にすべての資産を承継会社に移転して解散するような場合が、これに当たります(後述のとおり、日本の税法上、繰越欠損金の引継が認められる会社分割として、合併類似分割型分割という類型が規定されています。)。この点、C型組織再編と比較していただけると気づくかと思いますが、C型組織再編とオーバーラップする部分が大きいです。C型とD型が両方適用されうる場合には、歳入法典368条(a)(2)によりD型が適用されることになります。

後者については、さらに、spin-off、split-off、split-upの3つの類型に分けられます。

spin-offは、分割会社が、その事業の一部を切り出して承継会社に移転して、承継会社の株式を分割会社の既存株主に(典型的にはプロラタで)分配するというもの。spin-offにおいては、既存株主は分割会社の株式と承継会社の株式を両方保有することになります。

split-offは、分割会社が、その事業の一部を切り出して承継会社に移転して、承継会社の株式を分割会社の株式と交換で(典型的には一部の株主に対してプロラタではなく)分配するというもの。NYUの講義では、承継会社の株式を受け取った株主は分割会社の株主ではなくなるため、実際上、一部の株主を切り離すために使われることも多いというような話もされていました。

split-upは、分割会社が、その事業を複数に分けて全て切り出してそれぞれ承継会社に移転して、各承継会社の株式を分割会社の株式と交換で分配して、自らは解散するというもの。出来上がりの形としては、分割会社は消滅して、分割会社の既存株主は承継会社のいずれかの株主になるということになります。split-upは実務上あまり用いられていないようで、NYUの講義では、実務家でもある講師が、みたことがないといっていました。

これらの分割的D型組織再編について非課税となるための要件を定めている歳入法典355条は、正確には、分割的D型組織再編についてだけ要件を定めているわけではなく、親会社が、歳入法典368条(c)の“支配”の要件を満たすような子会社の株式等を親会社の株主等に分配する場合全般について、課税しない場合を規定したものです。同条は、かかる子会社株式等の親会社による分配が非課税となるためには、以下の7つの要件を満たすことが必要であるとしています。

(ⅰ)親会社が子会社を分配の直前に支配していること。この“支配”は上記と同じ歳入法典368条(c)の意味(355条(a)(1)(A))。

(ⅱ)子会社株式の分配が、主として親会社または子会社の利益(earnings and profits)を分配するための仕掛け(device)ではないこと(355条(a)(1)(B))。

(ⅲ)分配の直後において、親会社と子会社がそれぞれ積極的事業活動を営んでいること。ただし、当該積極的事業活動は、少なくとも分配の直前5年間の期間において営まれてきたものであることが必要であり、かつ、当該5年間の期間に、親会社または子会社によって、利益または損失を認識する取引によって取得されたものではないことが必要(=歳入法典351条が適用される取引や適格組織再編によって取得されたものであればかまわない。なお、子会社の支配も当該5年間の期間に、親会社によって、利益または損失を認識する取引によって取得されたものではないことが必要。)(355条(a)(1)(C)、(b))。

(ⅳ)親会社が、
(a)子会社のすべての株式および有価証券を分配するか、または、
(b)分配される子会社の株式/有価証券の量が、歳入法典368(c)に規定する“支配”の要件を満たし、かつ、その一部の子会社の株式/有価証券を分割会社に残した分配が租税回避を目的とするものではないと歳入庁長官に認められるものであること(355条(a)(1)(D))。

(ⅴ)分配の直後において、
(a)親会社も子会社も“非適格投資会社(disqualified investment corporation)”に該当しないこと、または、
(b)分配直前に当該非適格投資会社の50%以上の持ち分を保有していた者を除き、いずれの非適格投資会社についても50%以上の持ち分を保有する者がいないこと(歳入法典355条(g))。
“非適格投資会社”とは、歳入法典355条(g)(2)(B)に規定される投資用資産(現金、株式、有価証券、組合持分、債権等)が全資産の時価の3分の2を占めている会社をいいます。

(ⅵ)分配の直後において、親会社または子会社の株式の50%以上が、分配の直前5年間に親会社または子会社の株式を購入した者によって保有されていないこと(歳入法典355条(d))。

(ⅶ)親会社または子会社の株式の50%以上が、分配の日の時点における計画に基づいて特定の者(たち)に取得されないこと(グループ内における分配については例外あり。)(歳入法典355条(e))。

ただし、上記(ⅵ)及び(ⅶ)の要件については、これを満たさなくとも親会社(=分割会社)に対して課税がなされるのみで、分配を受ける株主等に対しては課税はなされません。

取得的D型組織再編についても、分割的D型組織再編についても、A型、B型、C型と同様、法文上の要件以外に、①business purpose、②continuity of proprietary interest (COI)、③continuity of business enterprise (COBE)の各要件が問題となります。この点、分割型D型組織再編については、①および②だけが必要であるかのような説明がしてある文献も多いのですが、この分野で比較的権威のある本と思われるGinsburg & Levin “Mergers, Acquisitions and Buyouts”やBittker & Eustice “Federal Income Taxation of Corporations and Shareholders”などによれば、③の要件も必要であるような説明がなされています。また、②COIについては、A型などの取得的組織再編と分割的組織再編では要求される内容が異なり、分割的組織再編では、分割会社の既存株主がspin-off等で分配を受けた承継会社株式をすぐに売却することになっているような場合には、COIが害されることになるとされています(取得的組織再編では害されません。)。

※日本の会社法上、“人的分割”は“物的分割”+剰余金の配当と整理され、なくなりましたが、税法はこれに対応しておらず、まだ“分割型分割”&“分社型分割”という“人的分割”&“物的分割”に対応する区別が残っています。
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by fbrat | 2008-04-30 17:09 | Tax

“C” Reorganizations

B型組織再編からまた時間が空いてしまいましたが、C型組織再編について。

C型組織再編は、取得法人が、対象法人の実質的に全て(substantially all)の資産を、取得法人(またはその親会社)の議決権付株式のみを対象法人の株主に交付することと交換に取得し、対象法人が清算される場合です。上記の“実質的に全て”とは、対象法人の純資産(net asset)のfair market valueの90%以上で、かつ、総資産(gross asset)のfair market valueの70%以上とされています。また、“取得法人(またはその親会社)の議決権付株式のみ”と交換に、と書きましたが、B型と異なり、C型においては、対価として交付される資産のうち、取得法人の議決権付株式等以外の資産(すなわち、無議決権株式、社債、金銭等)の交付も、取得法人が対象法人から取得する全資産のfair market valueの20%を限度に認められています(つまり、議決権付株式が対価の80%を占めていればよい。)。さらに、A型およびB型と同様に、①business purpose、②continuity of proprietary interest (COI)、③continuity of business enterprise(COBE)の各要件を満たすことも必要です。

C型組織再編については、日本法上、これに対応するような類型の組織再編などは特にありません。敢えていえば、分割型(=人的分割)の吸収分割において分割会社がその実質的にすべての資産を承継会社に移転して解散するような場合がこれに近いですが、日本における会社分割に相当する取引はアメリカではD型組織再編がカバーしています。

C型組織再編については、にも引用した上記の本(渡辺 徹也『企業組織再編成と課税 』(弘文堂))にも収録されているこの論文が詳しいです。というか、アメリカの組織再編税制については、私が日本を出てくる時点では上記の本が一番詳しかったかと思いますので、アメリカの組織再編税制について、このブログでざくっと書いてあるよりも日本語でより詳しい情報をということであれば、上記の本を参照していただくのがよいのではないかと思います。
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by fbrat | 2008-03-15 10:07 | Tax

“B” Reorganizations

A型組織再編について書いてから、しばらく間が空いてしまいましたが、B型組織再編について。

B型組織再編は、取得法人が、対象法人の株主に対して、取得法人(またはその親会社)の議決権付株式のみと交換で対象法人の株式を取得し、取得直後の時点において、対象法人をcontrolしている場合がこれに当たります。対象法人をcontrolしているといえるためには、対象法人の全ての議決権付株式の80%以上および各無議決権株式の80%以上を所有している必要があります(歳入法典368条(c))。100%を取得した場合には、日本の株式交換と同じ状態になりますが(アメリカの州法上の株式交換もB型組織再編に含まれる)、それに限られず、上記のとおり80%以上を取得することを条件に、取得法人の株式を対価として対象法人の株式を取得する場合に適用されます。したがって、exchange tender offer等にも適用されることになります。

B型組織再編の要件としては、A型と同様に、①business purpose、②continuity of proprietary interest (COI)、③continuity of business enterprise(COBE)の各要件を満たしたうえで、上記のとおり“control”の要件を満たすことが必要になりますが、B型の②COIの要件は、A型とは異なり、金銭等の非適格資産(boot)の交付は一切認められていません(上記の「議決権株式のみ」との点)。したがって、株式取得の対価として金銭等が少しでも交付されると非適格ということになります。

B型組織再編に対応する類型の取引について、日本の税制を見ると、まず、日本には、exchange tender offerについてこれを一定の場合に非課税とするような規定はありません。したがって、日本でexchange tender offerを行おうとすると、対象法人の株主がofferに応じた場合、対価として取得法人の株式を受け取るので手元に現金が入ってこないにもかかわらず、利益が生じた場合には課税されることになります。この点は、日本で金商法において(←証取法の時代から)exchange tender offerに対応するための規定があるにもかかわらず(27条の4)、exchange tender offerがあまり利用されるようにならない1つの原因として批判されています。もっとも、会社法における三角合併等の導入で、あれだけ日本企業がますます外資に買収されると大騒ぎになったことを考えると(←もっとも実際には今のところ目立った例は、救済の色合いも濃いCitiによる日興の買収くらいなのですが)、exchange tender offerが行われやすくなるための税制改正が近いうちになされることなど、あまり期待できない気もします。

一方で、B型組織再編に対応する類型の取引として、日本で適格組織再編税制の対象になっているものとしては、株式交換があります。株式交換について適格が認められるための要件としては、合併とほぼ同様で、①100%グループ内の株式交換、②50%超100%未満のグループ内の株式交換、③共同事業を営むための株式交換があり、すべての適格株式交換に共通する要件として、

(Ⅰ)対価として金銭等の支払がないということ、

②と③に共通する要件として、

(Ⅱ)従業者引継要件(=株式交換で完全子会社になる会社(以下「完全子会社」)の株式交換直前の従業員のうち約80%に相当する者が、株式交換後の完全子会社の業務に従事することが見込まれていること)、及び、

(Ⅲ)事業継続要件(=完全子会社の従前の主要な事業のうちのいずれかが、株式交換後も引き続き営まれることが見込まれていること)、

③のみの要件として、

(Ⅳ)事業関連性要件(=株式交換で完全親会社になる会社(以下「完全親会社」)の事業と完全子会社の事業とが相互に関連するものであること)、

(Ⅴ)規模要件(=完全親会社と完全子会社の売上金額、従業者数、資本金の額もしくはこれに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないこと) or 経営参画要件(=完全子会社の特定役員のいずれかが株式交換に伴って退任するものではないこと)、

(Ⅵ)完全子会社の株主の株式継続保有要件(=完全子会社の株主のうち、株式交換により交付される完全親会社(またはその親法人)の株式を継続して保有することが見込まれる者の保有する株式の割合が80%以上であること-但し、この要件は株主50人未満の場合のみ)、及び、

(Ⅶ)完全親法人の株式継続保有要件(=完全親会社が、株式交換後、完全子会社の発行済株式の全部を継続して保有することが見込まれること)

があります。

A型と異なりB型においては、対価として金銭等の支払いがないことが要求されるため、(Ⅰ)の点は日本の株式交換とB型との間で差はないといえますが、適格となる株式交換がグループ内か共同事業を営むための株式交換に限られており、(Ⅱ)や(Ⅳ)~(Ⅶ)のような要件がある分、やはり合併同様、日本の株式交換の方が税制適格のための要件が相当厳しいということができるように思います。

単に要件が厳しいというのにとどまらず、日本の株式交換に関する税制の特徴(問題点?)として、適格にならなかった場合に、完全子会社の資産の含み損益が認識・計上されることが挙げられます。合併等の場合と平仄を合わせたという説明は理解できるものの、株式交換においては、完全子会社は、その株式が株主から完全親会社に移転したのみで、それ自体の組織には何の変更もないため、やや違和感のある制度でもあります。かかる税制は2006年10月から導入された(それ以前は株式の譲渡益課税の繰り延べの特例はあったものの、かかる特例を満たさなかった場合にも完全子会社に対する課税はなかった)ため、それまで産活法の下での金銭を対価とする株式交換がスクイーズアウトの手段としてよく利用されていたのが、せっかく会社法の下で組織再編の対価柔軟化がなされたにもかかわらず、金銭を対価とする株式交換は、スクイーズアウトの手段としては、ほぼ利用されなくなってしまいました。代わりに私が留学に出てくる直前は全部取得条項付種類株式がよく利用されるようになっていましたが、2008年の税制改正要綱で全部取得条項付種類株式の取得における対価に関する価格決定の申立て(会社法172条)の結果として支払われる金銭は「みなし配当」にあたらない旨を明確化することがうたわれているようなので、スクイーズアウトの手段としては、引き続き全部取得条項付種類株式が主流ということになるのでしょうか。
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by fbrat | 2008-02-27 15:17 | Tax

“A” Reorganizations

遊んでばかりいると思われるといけないので、たまには真面目な記事も。

先週から大学は春学期が始まりましたが、春学期に履修することにした科目の1つにTaxation of Mergers & Acquisitionsという科目があります。その名のとおり、アメリカの組織再編税制についての科目です。秋学期に、Corporate Taxの授業をとっていて、そこでも組織再編税制については若干触れたのですが、シンプルなA型組織再編について課税の取扱いの詳細をみた以外は、ごく簡単にしか触れませんでした。なので、Taxation of Mergers & Acquisitionsを受講するにあたって、これもまたごく簡単にですが、ここでアメリカの組織再編税制について順にまとめておきたいと思います。とりあえず今回は、A型から(どこまで続くか分かりませんが…。)。

まず、アメリカの組織再編税制全体の大枠から簡単に説明しておくと、アメリカの歳入法典(Internal Revenue Code)には、A型からG型まで7種類の非課税の組織再編(corporate reorganization)が定められています。ちなみに、英語で単に corporate reorganizationというと、一般的には日本でいう会社更生などを意味する場合が多く、税法上のcorporate reorganizationについても、reorganizationとはそもそも非課税となる組織再編のことなので、もっと広く、非課税とならないものまで含めた日本語の“組織再編”に該当する内容をいいたければ、corporate transactionとかcorporate rearrangementとかいった方がよいようです(渡辺徹也『企業組織再編成と課税』(弘文堂)2頁等参照)。A~Gの名称は、それぞれ歳入法典368条(a)(1)の(A)から(G)に規定されているため、このような呼ばれ方となっています。

そのうち、A型組織再編は、州会社法の規定に準拠した会社同士の合併をいいます。吸収合併(merger)も新設合併(consolication)も含み、また、368条(a)(2)(D)及び(E)に基づきA型組織再編に含まれるものとして三角合併及び逆三角合併があります。三角合併及び逆三角合併についてはまた機会を改めて。

A型組織再編の要件としては、他の組織再編の類型にも共通する要件ですが(ただし、これらの要件は判例法上の要件であって、法文上の要件ではない)、①business purpose、②continuity of proprietary interest (COI)、③continuity of business enterprise (COBE)の3つの要件を満たすことが必要とされています。

①business purposeは、アメリカの税法の判例の中でも特に有名な判決の1つであるGregory判決に基づいて、組織再編に「事業目的」を要求するもの。

②COIは、日本語では「投資持分継続性」などと訳されてますが、Reg.§1.368-1(e)(1)(i)によれば、“Continuity of interest requires that in substance a substantial part of the value of the propriety interst in the target corporation be preserved”ということで、対象法人の株式の一定の割合が、取得法人の株式(普通株式か優先株式か、あるいは、議決権の有無等は問わない)と交換される等の形で、投資持分が維持されなければいけないという要件です。“一定の割合”については、以前の歳入庁のセーフハーバーでは50%あれば大丈夫とされていたようですが、2005年に出されたregulation上で挙げられている例では、40%でCOIの要件を満たしていると認められるとしているものがあり、近時は40%以上あれば大丈夫ともいわれているようです。

③COBEは、日本語では「事業継続性」などと訳されてますが、Reg.§1.368-1(d)(1)によれば、取得法人が対象法人の従前の事業を継続するか、取得法人の事業において対象法人の従前の事業資産の重要な部分を使用することが必要であるとされています。

ところで、日本の適格組織再編税制は、アメリカの組織再編税制の影響を受けて作られたといわれていますが、日本の適格組織再編税制における適格合併の要件は、企業グループ内の組織再編と共同事業を営むための組織再編により異なります。さらに前者は株式保有割合が100%の場合と50%超100%未満の場合に分けられます。

すべての適格合併に共通する要件として、(Ⅰ)合併対価として金銭等の支払がないということがあります。この点に関しては、(1株に満たない端数についての金銭の支払等の例外はあるものの)合併対価は、基本的に100%取得会社の株式でなければいけないということなので、対象会社の株式の対価のうち、取得会社の株式が40%を占めていればCOIの要件を満たしているとされるアメリカの税制に比べると非常に厳しいように思われます。ただし、100%の企業グループ内組織再編はこの要件のみを満たしていれば非課税とされます(ただし、100%のグループ関係(兄弟会社や間接的なものも含む。)は継続される見込みでなければなりません。)。

次に、50%超100%未満の企業グループ内組織再編については、上記の(Ⅰ)に加えて、(Ⅱ)従業者引継要件(=対象法人の合併直前の従業員のうち約80%に相当する者が、合併後の法人の業務に従事することが見込まれていること)と、(Ⅲ)事業継続要件(=対象法人の従前の主要な事業のうちのいずれかが、合併後の法人において引き続き営まれることが見込まれていること)があります。(Ⅲ)の要件はアメリカのCOBEに対応するものといえそうですが、(Ⅱ)の要件の分だけアメリカよりも厳しいとも考えられます(さらに、50%超のグループ関係(兄弟会社や間接的なものも含む。)は継続される見込みでなければなりません。)。

さらに、共同事業を営むための組織再編については、上記の(Ⅰ)~(Ⅲ)に加えて、(Ⅳ)事業関連性要件(=対象法人の事業と取得法人の事業とが相互に関連するものであること)、(Ⅴ)規模要件(=対象法人と取得法人の売上金額、従業者数、資本金の額もしくはこれに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないこと) or 経営参画要件(=対象法人の特定役員(※注記参照)のいずれか及び取得法人の特定役員のいずれかとが、合併後の法人の特定役員となることが見込まれていること)、及び、(Ⅵ)株式継続保有要件(=対象法人の発行済株式のうち、対象法人の株主で合併により交付される取得法人(またはその親法人)株式を継続して保有することが見込まれる者の保有する株式の割合が80%以上であること-但し、この要件は株主50人未満の場合のみ)を満たす必要があります。(Ⅳ)や(Ⅴ)のような要件はアメリカにはなく、(Ⅵ)はCOIに関係する点ではありますが、アメリカでは合併後に株式を売買してもCOIの要件を害することはないので(ただし、市場外での合併法人による自己株式取得は除く。)、やはりこれもアメリカより厳しい要件ということができるように思います。

以上のとおり、ざっくりA型について見たところでは、合併については、日本の適格組織再編税制の方が、アメリカのそれよりは相当厳しいということが分かります。

※社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者
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by fbrat | 2008-01-21 16:02 | Tax