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“D” Reorganizations その2

一方、日本の税制についてみてみると、D型組織再編に対応する類型の取引は、日本の税制における会社分割のうち“分割型分割”に相当し、日本における“分社型分割”はアメリカでは歳入法典351条の対象であることは上に書いたとおりですが、“分社型分割”も含めた日本の適格会社分割の要件は、以下のとおりです。

会社分割について適格が認められるための要件についても、合併や株式交換と同様、①100%グループ内の会社分割、②50%超100%未満のグループ内の会社分割、③共同事業を営むための会社分割があり、すべての適格会社分割に共通する要件として、

(Ⅰ)分割会社の株主に承継会社株式またはその親法人株式(100%グループ内の会社分割については100%親法人に限る。)のいずれか一方以外の資産が交付されないこと、および、

(Ⅱ)(分割型分割についてのみ)承継会社株式またはその親法人株式が、分割会社の株主の有する分割会社株式の数の割合に応じて交付されること

②と③に共通する要件として、

(Ⅲ)主要資産等引継要件(=会社分割により移転される事業(以下、「分割事業」)に係る主要な資産および負債が承継会社に移転していること)

(Ⅳ)従業者引継要件(=会社分割の直前に分割事業に従事している従業員のうち約80%に相当する者が、分割後の承継会社の業務に従事することが見込まれていること)、および、

(Ⅴ)事業継続要件(=分割事業が、会社分割後も承継会社において引き続き営まれることが見込まれていること)、

③のみの要件として、

(Ⅵ)事業関連性要件(=吸収分割の場合、分割事業と承継会社が分割前から営む事業のいずれか(以下、「分割承継事業」)が相互に関連するものであること、共同新設分割の場合、各分割会社の分割事業同士が相互に関連するものであること)、

(Ⅶ)規模要件(=吸収分割の場合、分割事業と分割承継事業の、共同新設分割の場合、各分割会社の分割事業同士の、売上金額、従業者数、資本金の額もしくはこれに準ずるものの規模の割合が概ね5倍を超えないこと) or 経営参画要件(=吸収分割の場合、分割会社の役員のいずれかおよび承継会社の特定役員のいずれかが、共同新設分割の場合、各分割会社の役員のいずれかが、承継会社の特定役員となることが見込まれていること)、および、

(Ⅷ)株式継続保有要件(=分割型分割の場合、分割会社の株主で会社分割により交付される承継会社(またはその親法人)株式を継続して保有することが見込まれる者が保有する分割会社株式の分割会社発行済株式に占める割合が80%以上であること(但し、この要件は分割会社の株主が50人未満の場合のみ)、分社型分割の場合、分割会社が会社分割により交付を受ける承継会社の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること)、

があります。

日本とアメリカの違いとしては、繰り返しになりますが、まず、日本における分社型分割がアメリカのD型組織再編には含まれておらず、設立等に関する歳入法典351条が適用になることが挙げられます。歳入法典351条において現物出資が非課税とされるためには出資後に出資者が会社を支配(歳入法典368条(c)、上記のとおり、発行済株式の議決権の80%以上、かつ、各無議決権株式の80%以上ずつを保有していることが必要。)していることが必要になります。したがって、例えば、吸収分割において、分割会社が、会社分割によって、従前、資本関係のない承継会社から、その発行済株式の50%にあたる株式の発行を受けるような場合には、日本において適格になるような場合であっても、アメリカでは適格にならないということになります。もちろん、逆に、アメリカでは非課税の現物出資に当たりうるような分社的分割が日本では非適格という場合もあります。

次に、アメリカの取得的D型組織再編に当たる取引としては、日本においても、上記のとおり、合併類似分割型分割と呼ばれる類型の取引が存在します。ただし、これは、適格組織再編についての類型ではなく、繰越欠損金の引継について認められている類型(これ以外の場合は、会社分割について繰越欠損金の引継は認められていない。)であって、適格組織再編となるためには、別途、上記の会社分割の税制適格要件を満たす必要があります(なお、合併類似分割型分割では、分割会社が分割直後に解散することが予定されているため、グループ関係が継続されることが必要なグループ内の会社分割の適格要件を満たすことはできません。したがって、共同事業を営むための会社分割の適格要件を満たすかどうかの問題となります。)。一方、アメリカにおいては、A型、C型、F型ならびに歳入法典354条(b)(1)(A)および(B)の要件を満たすD型およびG型(すなわち、D型については取得的D型組織再編)について、繰越欠損金の引継が認められています。ただ、アメリカの取得的D型組織再編の“substantially all”の要件は、C型以上にかなり緩やかに解されているようなので、資産および負債をすべて移転しなければならないとされている日本の合併類似分割型分割よりは、要件として緩やかといえるかもしれません(もっとも、アメリカにおける繰越欠損金の利用には、歳入法典382条に規定するownership changeがあった場合には同条に規定する利用制限がかかってくるので、合併類似の会社分割における繰越欠損金の引継について、一概にアメリカの方が緩やかとも言い切れないとは思います。)。

最後に、アメリカの分割的D型組織再編と日本の分割型分割の比較としては、例えばアメリカの(ⅱ)積極的事業活動の要件と日本の(Ⅴ)事業継続要件のように、関連性がありそうな要件も認められるものの、全体としてはかなり異なった要件の定め方になっているため、一概にどちらが厳しくてどちらが緩やかとは言えないように思われます。大きな点としては、日本では、spin-offを含む分割型の単独新設分割や非按分型の分割型分割が適格にならず、また、金銭等の交付は一切認められないという点で制限が厳しいこと、一方で、アメリカでは、(ⅴ)~(ⅶ)のような租税回避に対応するための要件が設けられていることなどが指摘できるかと思います(渡辺徹也『企業組織再編成と課税』参照。)。特に、アメリカでは、企業がその事業の一部をspin-offしてIPOを行うことがよくなされているという話を聞くと、日本でも、新事業の創出等の観点からも、少なくとも一定のspin-offについては非課税化されることが望ましいように思われます。
by fbrat | 2008-04-30 17:12 | Tax