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“D” Reorganizations その1

C型組織再編からまた時間が空いてしまいましたが、D型組織再編について。

D型組織再編は、ほぼ日本における会社分割のうちいわゆる“分割型分割”ないし“人的分割”(※注記参照)にあたるものです。日本における“分社型分割”ないし“物的分割”は、アメリカでは設立などに関する歳入法典351条により普通の設立などにおける現物出資と同様に扱われます(日本においては、現物出資については、適格組織再編の一類型として別に要件が規定されています。)。

D型組織再編を定義する歳入法典368条(a)(1)(D)は、D型組織再編を、

・会社の資産の全部または一部の、他の会社への移転であって、

・移転した者かその株主(あるいはその組み合わせ)が、移転の直後に資産の移転を受けた会社を支配しており、

・資産の移転を受けた会社の株式または有価証券が、計画に従い、歳入法典354条、355条または356条によって適格とされる取引によって分配されるもの

と定義しています(なお、上記の2つ目の要件の“支配”については、発行済株式の議決権の80%以上、かつ、各無議決権株式の80%以上ずつを保有していることが必要とされます(歳入法典368条(c))。)。

D型組織再編には、大きく分けて2つの類型があるのですが、これは、上記の3つ目の要件について、歳入法典354条(及び356条)に基づいて株式の分配がなされるものと、歳入法典355条(及び356条)に基づいて株式の分配がなされるものがあるためです(なお、354条、356条はこれまで見てきたA型、B型、C型などにも適用される規定です。)。したがって、D型組織再編は、これらの354条又は355条に規定される要件を満たす必要もあります(なお、356条は、非適格資産の分配についての規定なので、いずれの場合にも問題となりえます。)。このうち、354条の要件を満たす場合が取得的D型組織再編(acquisitive D reorganization)、355条の要件を満たす場合が分割的D型組織再編(divisive D reorganization)と呼ばれます。

前者の要件については、具体的には歳入法典354条(b)(1)(A)及び(B)がこれを定めているのですが、法人Aが、その実質的に全て(substantially all)の資産を法人Bに移転するとともに、法人Bの株式の50%超を取得し、その法人Bの株式を法人Aの株主に分配して、法人Aが清算されるというような場合に適格とされます。

日本の会社分割でいえば、分割型吸収分割において分割会社がその実質的にすべての資産を承継会社に移転して解散するような場合が、これに当たります(後述のとおり、日本の税法上、繰越欠損金の引継が認められる会社分割として、合併類似分割型分割という類型が規定されています。)。この点、C型組織再編と比較していただけると気づくかと思いますが、C型組織再編とオーバーラップする部分が大きいです。C型とD型が両方適用されうる場合には、歳入法典368条(a)(2)によりD型が適用されることになります。

後者については、さらに、spin-off、split-off、split-upの3つの類型に分けられます。

spin-offは、分割会社が、その事業の一部を切り出して承継会社に移転して、承継会社の株式を分割会社の既存株主に(典型的にはプロラタで)分配するというもの。spin-offにおいては、既存株主は分割会社の株式と承継会社の株式を両方保有することになります。

split-offは、分割会社が、その事業の一部を切り出して承継会社に移転して、承継会社の株式を分割会社の株式と交換で(典型的には一部の株主に対してプロラタではなく)分配するというもの。NYUの講義では、承継会社の株式を受け取った株主は分割会社の株主ではなくなるため、実際上、一部の株主を切り離すために使われることも多いというような話もされていました。

split-upは、分割会社が、その事業を複数に分けて全て切り出してそれぞれ承継会社に移転して、各承継会社の株式を分割会社の株式と交換で分配して、自らは解散するというもの。出来上がりの形としては、分割会社は消滅して、分割会社の既存株主は承継会社のいずれかの株主になるということになります。split-upは実務上あまり用いられていないようで、NYUの講義では、実務家でもある講師が、みたことがないといっていました。

これらの分割的D型組織再編について非課税となるための要件を定めている歳入法典355条は、正確には、分割的D型組織再編についてだけ要件を定めているわけではなく、親会社が、歳入法典368条(c)の“支配”の要件を満たすような子会社の株式等を親会社の株主等に分配する場合全般について、課税しない場合を規定したものです。同条は、かかる子会社株式等の親会社による分配が非課税となるためには、以下の7つの要件を満たすことが必要であるとしています。

(ⅰ)親会社が子会社を分配の直前に支配していること。この“支配”は上記と同じ歳入法典368条(c)の意味(355条(a)(1)(A))。

(ⅱ)子会社株式の分配が、主として親会社または子会社の利益(earnings and profits)を分配するための仕掛け(device)ではないこと(355条(a)(1)(B))。

(ⅲ)分配の直後において、親会社と子会社がそれぞれ積極的事業活動を営んでいること。ただし、当該積極的事業活動は、少なくとも分配の直前5年間の期間において営まれてきたものであることが必要であり、かつ、当該5年間の期間に、親会社または子会社によって、利益または損失を認識する取引によって取得されたものではないことが必要(=歳入法典351条が適用される取引や適格組織再編によって取得されたものであればかまわない。なお、子会社の支配も当該5年間の期間に、親会社によって、利益または損失を認識する取引によって取得されたものではないことが必要。)(355条(a)(1)(C)、(b))。

(ⅳ)親会社が、
(a)子会社のすべての株式および有価証券を分配するか、または、
(b)分配される子会社の株式/有価証券の量が、歳入法典368(c)に規定する“支配”の要件を満たし、かつ、その一部の子会社の株式/有価証券を分割会社に残した分配が租税回避を目的とするものではないと歳入庁長官に認められるものであること(355条(a)(1)(D))。

(ⅴ)分配の直後において、
(a)親会社も子会社も“非適格投資会社(disqualified investment corporation)”に該当しないこと、または、
(b)分配直前に当該非適格投資会社の50%以上の持ち分を保有していた者を除き、いずれの非適格投資会社についても50%以上の持ち分を保有する者がいないこと(歳入法典355条(g))。
“非適格投資会社”とは、歳入法典355条(g)(2)(B)に規定される投資用資産(現金、株式、有価証券、組合持分、債権等)が全資産の時価の3分の2を占めている会社をいいます。

(ⅵ)分配の直後において、親会社または子会社の株式の50%以上が、分配の直前5年間に親会社または子会社の株式を購入した者によって保有されていないこと(歳入法典355条(d))。

(ⅶ)親会社または子会社の株式の50%以上が、分配の日の時点における計画に基づいて特定の者(たち)に取得されないこと(グループ内における分配については例外あり。)(歳入法典355条(e))。

ただし、上記(ⅵ)及び(ⅶ)の要件については、これを満たさなくとも親会社(=分割会社)に対して課税がなされるのみで、分配を受ける株主等に対しては課税はなされません。

取得的D型組織再編についても、分割的D型組織再編についても、A型、B型、C型と同様、法文上の要件以外に、①business purpose、②continuity of proprietary interest (COI)、③continuity of business enterprise (COBE)の各要件が問題となります。この点、分割型D型組織再編については、①および②だけが必要であるかのような説明がしてある文献も多いのですが、この分野で比較的権威のある本と思われるGinsburg & Levin “Mergers, Acquisitions and Buyouts”やBittker & Eustice “Federal Income Taxation of Corporations and Shareholders”などによれば、③の要件も必要であるような説明がなされています。また、②COIについては、A型などの取得的組織再編と分割的組織再編では要求される内容が異なり、分割的組織再編では、分割会社の既存株主がspin-off等で分配を受けた承継会社株式をすぐに売却することになっているような場合には、COIが害されることになるとされています(取得的組織再編では害されません。)。

※日本の会社法上、“人的分割”は“物的分割”+剰余金の配当と整理され、なくなりましたが、税法はこれに対応しておらず、まだ“分割型分割”&“分社型分割”という“人的分割”&“物的分割”に対応する区別が残っています。
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by fbrat | 2008-04-30 17:09 | Tax